沖縄の最北端に位置する国頭漁業協同組合(以下 国頭漁協)は、やんばるの大自然に恵まれた辺土名漁港にあり、漁場では新鮮な魚が水揚げされると評判でした。
しかし、那覇から車で2時間以上という立地のため、交通輸送上 鮮度を保つことが難しく、希少で美味だけれども足の早い魚は現地で消費されるもの以外は放棄せざるを得ませんでした。
新鮮な魚は獲れるのに、流通させきれない。
その長年の悩みを解決したのが、高砂熱学工業株式会社(以下 高砂熱学)が空調技術を活かして開発したシャーベットアイス製氷機です。
さらに、その性能を有効に機能させるため、漁協・漁師みんなの協業で鮮度をキープするシステムを作り上げ、今では国内大都市洋食店、フレンチ・イタリアンなどの飲食店にも鮮魚を届けることが可能になりました。今回、国頭漁協の取り組みを学ぶワークショップが行われ、前編ではシャーベットアイスを船に積み、定置網漁業体験のレポートをお届けしました。
今回は中編です。
>>>前編はこちら
セリ市場に、それぞれの漁師が獲った魚が次々と並びます。国頭漁協では「高品質な鮮魚を維持管理する」ために、陸上でも5つの工程を徹底しています。
①「受け入れ品質チェック」天然の鮮魚は漁獲方法や環境により状態が変化するため、お客様へ渡る前に、魚体チェック(外観)、温度チェック(鮮度)を行います。
②「冷却保存管理」「受け入れ品質チェック」後、並べられた魚をアイスシャーベットで冷却。約マイナス1℃で冷却維持=鮮度維持を行い、これにより品質の均一化も実現しています。
③「セリ場冷却管理」沖縄は外気温が高い為、一般的に行われているセリ市場鮮魚の陳列方法では、鮮度低下が急速に進みます。そこで国頭漁協では、セリ市場の受け入れから終了まで、鮮魚陳列にシャーベットアイスが使われています。
セリが始まりました。
外気温が高まるセリ場でもシャーベットアイスに浸しているため、鮮度が低下せず安心してセリが行われます。
④「出荷管理」物流を含め、お客様へお届けするまでが仕事ととらえる国頭漁協では、到着時点まで物流品質(温度・時間)を考慮した適切な出荷管理を実施していました。
この鮮魚は東京へ運ばれていきました。
そして最後は⑤「お客様の声」積極的にお客様の声をヒアリングし、改善につなげています。
ボックスにシャーベットアイスを入れて、魚を浸漬しておけば、そのまま5~7日は鮮度を保ったままというから驚きです。
台風などの天候不良で漁に出られず、本島からの物質が届かないなど食料が不足するリスクのある沖縄では、魚を新鮮な状態で長期保存できるのは便利かつ安心。停電になっても心強いと感じます。
また、実際に現場を見て、シャーベットアイスに浸すだけという作業は大変扱いやすく、「シャーベットアイスに浸されている=鮮度が保持されている」ということが一目瞭然という点も効率的と感じました。
現場の方からも、「水のようにゆるい氷で本当に大丈夫なのか?半信半疑だったが使用してみるとこの流体の特性で、水槽の下までしっかりと冷やし込みができていて、魚の鮮度に明らかな違いが出ました。」
「シャーベットアイスにより、均一に長時間冷やし込みがされるので、魚の持ちが格段に良くなりました。移動時間を気にしなくてよくなったというのが一番大きい。」との声がありました。まさに目からウコロの鮮魚のお話です。
海外では、日本食の人気はますます うなぎのぼり。その需要にあやかり、現在では、2019年からシンガポールへの輸送を行なっています。
沖縄より南に位置するシンガポールの魚は、沖縄と同様、カラフルで魚種も似ていますが、やんばるから輸送した鮮魚の方が格段に品質が良いと好評なのだそう。
水揚げされた魚はシャーベットアイスに浸漬された翌日に出荷、2日後にシンガポールに到着したのち、各レストランへ運ばれ、水揚げから約一週間ほどで提供されるとのこと。
お客さまがいただくそのときまで新鮮な状態を保てるのがシャーベットアイスの魅力。シンガポールのミシュランシェフもその品質を認め、取引されたことがあるそうです。
後編へ続く>>>