【1泊モニターツアーレポート】今、会いに行きたい沖縄の美食体験~シェフが誘う革新と伝統を味わう旅へ~

2024年1月25日~26日

沖縄には地元・ウチナーンチュも知らない食の“美味しい宝”があふれています。


島の大自然の中で育つ農畜産物や海産物、琉球王国の歴史・伝統の中で育まれた食文化、それらを継承する料理人など。

このツアーは、沖縄の食の魅力を活用し、新たな食体験創出の可能性を広げるとともに、その価値を発信するために企画されました。


モニターとして、”食”に精通したメディア『dancyu』の会員組織「dancyu食いしん坊俱楽部」から、部長の植野広生さんをはじめとした部員の皆さん、県内からはホテルシェフや観光事業者の方が参加しました。
案内人は、沖縄の食に魅了され自らも料理人として腕をふるい、発信を行う角谷健氏。感動を呼び起こす生産者や料理人を訪ね、その魅力を深掘りしていきます。


未知なる沖縄食体験へ、さあ、出発!

まずは、スパイスカフェOn the farmへ

@On the farm

一路、(株)クックソニア代表であり畑人(ハルサー_沖縄の方言で農業を営む人)である芳野幸雄氏が手がけるスパイスカフェOn the farmへ向かいます。

着いたのがお昼時ということで、まずは芳野さんの育てているやんばる産の野菜とスパイスで作る特製スパイスカレーをいただきます。

とても綺麗な色合いです。

お腹がいっぱいになったところで、店先や庭で育てている、スパイスの元となる植物のお話をうかがいました。

芳野さんの畑見学。

 

スパイスカフェOn the farmをあとに、畑へ移動。先程ごちそうになったカレーのお皿の中にあっ
た、野菜やスパイスの素となる植物は、こんな大自然の中で作られているんですね。

香りを体感すると、自然と、先程のカレーとリンクします。

安心安全の野菜・スパイス作りを行うほか、やんばるの食の魅力を広めるため様々な活動に取り組む芳野さんの貴重なお話。

@クックハル
農園見学後は芳野さんが運営するカフェにて休憩タイム。やんばる野菜やスパイスなどの販売も
行っており、県民にも人気の商品も入手できます。

1月は沖縄県産イチゴが出始める時期でした。甘酸っぱくて美味しい。

続いては、6SIX(シス)でディナーを堪能

@6SIX(シス)

さて、続いてはじっくり味わうディナータイムです。

海一面に広がる景色に誘われ、古宇利大橋を渡りディナーの舞台、6SIX(シス)へ。夕暮れから夜へと移り変わる絶景も醍醐味。

最初に運ばれてくるのは色とりどりのアミューズ!テーブルいっぱいに広がるメニューの多さに驚きと喜びが湧き上がります。

その独創性と美しさは、まるでアートのよう。まさにアミューズメントパークのようにワクワクが止まりません。一品一品、沖縄食材の魅力が余すことなく引き立てられていました。

提供の仕方も、とてもユニーク。

こちらは6SIX(シス)のシグネチャーメニュー。
こんがりと焼き上げたカリフラワーを斧でカット。ジューシーな味わいは本当にカリフラワーだけなの?と疑いたくなります。

デザートの数字。どうやら私たちはオープンして通算16323組目のお客様だったようです。

 

シェフの小杉さんはもともと名古屋でフレンチレストランを経営。2018年に奥様の出身地である沖縄に来て古宇利島にお店を構えました。以来、県外のお客様が絶えず訪れる人気店となっています。
沖縄の食材が、シェフの腕によって独創的かつ先鋭的な料理に生まれ変わる。美術館を訪れたか、もしくはショーを観に来たかのような、そんな体験をした夜でした。

2日目は金武町ターム畑からスタート

2日目 2024年1月26日

@金武町ターム畑
夜が明けた早朝の爽やかな空気の中、本日最初に訪れたのは金武町で伝統野菜のターム(田芋)を栽培する金城貴興さんの畑で収穫体験です。
田芋は親芋を取り囲むように小芋がたくさんつくことから、沖縄では子孫繁栄の縁起物として親しまれてきました。一度煮て表面が割れた状態が美味しいとされることから金城さんはご自身の作るタームに「笑う芋には福来たる」と名付けています。

金城さんの後へ続き、参加者さんたちも、田芋を採りに畑へ入ります。 

予想していたよりもかなり土が深く、ぬかるんでいます。中には足を取られて抜けなくなり、手伝ってもらってやっと畑から脱出する人も。みんなに笑顔がこぼれます。

しっかりと張った根をはがしていく。かなり力がいる作業。
それだけに採れた時の喜びはひとしお。

収穫の後は、伝統的な田芋料理を味わいます。
皆が収穫をしている間に、今回のツアー案内人の角谷さんがタームフライとタームパイをキッチンカーで揚げてくれていました。

タームフライには、この後向かう、浜比嘉島のお塩がまぶされていました。

よもぎのタームジューシーと月桃の葉にくるまれたタームジューシー。
そしてムジ汁です。
※ ジューシー…沖縄の炊き込みごはん
※ ムジ汁…田芋の茎(ムジ)と豚肉、豆腐をカツオ出汁で煮た後、味噌で味を整えた栄養満点の汁物

田芋を収穫して、美味しく食べたら、この笑顔。

「笑う芋には福来たる」
金城さん、スタッフの藤崎さん、ありがとうございました。

続いて泡盛の蔵元、神村酒造さんへ

@神村酒造

七代目 仲里迅志社長よりお話をうかがいました。お人柄がお顔に出ていらっしゃる素敵な笑顔。

神村酒造では、ステンレスで作る通常の泡盛のほかに、樽でも泡盛を作っています。
戦後の沖縄では、ビールやウィスキーなど県民の嗜好がアメリカの食文化に影響され、泡盛離れが進んでしまいました。

そこで三代目の社長が、「飲まれているウィスキーと飲ませたい泡盛の良さを兼ね備えた泡盛を作ろう」と、オーク樽で貯蔵・熟成させた泡盛づくりに挑戦、10年の歳月をかけて商品化したのだそう。
ウィスキーの樽をリユースという、今の時代の最先端をこの時代で既にされていたことになります。七代目になった今でもこの挑戦は続き、神村酒造の大きな特徴となっています。

ここで神村酒造が誇る商品のご紹介。
中央の黒いラベルの泡盛「DANRYU(だんりゅう)」と、右から2番目の赤いラベルの泡盛は樽仕込み製法をした泡盛「暖流(だんりゅう)」。

ほんのりウィスキーの香りがするこの泡盛を炭酸で割り、暖流ハイボール、略して「暖ボール(だんぼーる)」として売り出し、人気急上昇中。

また赤いラベルの暖流は、2023年沖縄県知事賞を受賞し、さらにサンフランシスコ・ワールドスピリッツコンペティションでは審査員全員が「金賞」と判定した商品に与えられる『ダブルゴールド賞(最高金賞)』を受賞し、2021年・2022年の金賞受賞に引き続き、3年目の最高金賞を受賞しています。日頃の努力の賜物ですね。

これが泡盛に混ぜる黒麹菌。熟成されていく様子を、触れたり、香りを感じながら泡盛について
学びました。

「預かり古酒サービス」を行う地下蔵も見学。
記念すべき日に訪れ、5年10年と古酒になっていくことを楽しむ。沖縄に来るたびに毎年ここで記念写真とメッセージを収めたり、未来へ残すタイムトラベルギフトのようで愛を感じる空間。

銘柄別に食材とのペアリングを体験。
それぞれの泡盛と食材によって、口の中に甘みが増したり、よりスキッとした爽やかさを楽しめたり、味わいが変わります。うーん、奥深い。
本土へ帰っても泡盛とのペアリングを楽しめるようにと、ナッツやチーズ、チョコレートでの組み合わせをご提案いただき、美味しさに酔いしれながら、泡盛の魅力を深掘りしました。
ご案内いただいた仲里社長とスタッフの西田さん、ありがとうございました。

お次は、沖縄そば「帆掛きそば」へ

@帆掛きそば

次は、オーナー自ら釣り上げた鮮魚の出汁を使用した沖縄そば「帆掛きそば」へ。

その日に釣れたお魚で出汁を取るため、毎日出汁の風味が変わるのが魅力。さて、今日はどん
なお味でしょう。

おそばは魚貝のみを使った「海風そば」と、ソーキの入った「帆掛きそば」の2種類。一般的に使用される豚骨、昆布、かつおに加えさらに鮮魚の出汁が加わります。科学調味料を使わず、素材の味を重ねたこだわりスープは絶品!
まずは麺を食べ、最後はご飯にスープをかけてお茶漬けのようにいただき、自慢のお出汁を味わい尽くします。ご飯の上には、お出汁に使う魚から出る身で作った、添加物が一切入っていないお手製ふりかけ。これで、さらに旨味アップ。手作りのジーマミ豆腐も付いてきます。

美味しいおそばで参加者の皆さんのお話も弾みます。

最後にオーナーの前當慎也さんからお話をうかがいました。大好きな釣りのこと、沖縄の魚のこと、沖縄の漁の歴史を語るには欠かせないサバニ舟(店内にも飾られている)のこと、友人が作る沖縄県産小麦「島麦かなさん」を使った麺のこと。

ひとつひとつのお話が深い。好きなことにのめり込めばのめりこむ程、沖縄にしかないもの、沖縄の歴史や文化、先人たちの気持ちに触れる。その気持ちを受け止めた前當さんが、同じ志を持った仲間たちと、沖縄や地域、身近な人を大切にするために、帆掛きそばで自分らしく表現しながら前進していく、そんな印象を受けました。

店内には、お客様が店を出る時に目にする「いい風が吹きますように」のメッセージ。
店名の如く、良い風を捕まえて前に進む帆掛けサバニのように、前當さんの熱くて優しい心に触れた時間でした。

美味しい旅はまだまだ続きます

@高江洲製塩所

次は、昔ながらの製塩方法「流下式塩田」を利用してつくられる100%海水塩の浜比嘉塩。その塩作りを体験します。写真は、海水をくみ上げ、濾過し、濃度の濃い海水にするための設備。

火に長くかけているとミネラルが飛んでいき、より塩気が強くなる。
どのくらい火にかけるかで、それぞれ違った塩の味に仕上がります。
お互いの塩を味見してみると、ん!確かにそれぞれ味が違う!参加者さん同士で自分のお塩の自慢大会となりました(笑)。

 

出来上がった塩は瓶に詰め、オリジナル塩のお土産として持ち帰ることができます。帰ってからお料理に使うのが楽しみですね。

いよいよ美食の旅のクライマックス

@平安座公民館
いよいよ美食の旅のクライマックス。ツアーの最後は平安座公民館へむかい、平安座でサングヮチポーポーを作っている田村明美さんに会いにきました。
明美さんはサングヮチポーポーづくりのレジェンドと称されるほどの、島一番の名人です。

平安座島最大の行事、サングヮチャーに欠かせない平安座サングヮチポーポーを島の名人田村明美さんが目の前で焼き上げてくれます。

サングヮチポーポーとは、旧暦3月3日から5日の三日間に平安座島で行われる島最大の行事『サングヮチャー』の際、仏壇に供えられる伝統お菓子のこと。この期間は毎日お仏壇に供え、お客さまにもお出しするのだそうです。

見た目は一般的な「ポーポー」や「ちんびん」に似ていますが、全粒粉と麦粉を使うことがポイント。材料を手間をかけて混ぜ合わせ、水を十分に吸わせるため、一晩寝かせるのが理想。給水時間で仕上がりのもっちり感が断然違ってくるとのこと。

冷蔵庫で寝かせた生地は焼く前にしっかり常温に戻し、火加減を調整しながら一枚一枚丁寧に焼いていきます。一見簡単そうに見えますが、実はとても難しい!
表面にできる穴の開き具合で、仕上がりの良し悪しを判断。
島の女性たちは、おばあたちのこの技を、見よう見まねで習得しながら何年もかけて家々の味を受け継いできたのでしょうか。

「平安座のポーポーは全粒粉のメリケン粉(小麦粉)と麦粉を入れるんだよ」と明美さん。一緒に焼いてみます。

焼き上がったら、熱いうちにクルクルと巻いて、出来上がりです。

普段、ホテルで総料理長をしている参加者さんも最初は少し緊張気味でしたが、明美さんにつられてこの笑顔。

「穴がブツブツと空いているのが、平安座のポーポーだよ」と明美さん。出来たての美味しさと一緒に、島の暮らしや沖縄の風土と共にある「食」を味わいました。

明美さん、貴重な経験をありがとうございました。
またポーポーを食べに会いに来ます!


今回のツアーでは、生産者や料理人といった地元の「人」とのふれあいや、地域の自然や伝統文化など沖縄のテロワールを体感するコンテンツを盛り込むことで、より沖縄食体験の魅力を深掘りし、楽しんでいただくことができました。


参加いただいた方からも「メジャーな観光では体験できない食材や料理を知ることができた」「沖縄の味の根本(おばあなど)や季節行事を大切にする習慣を体感できた」「面白い試み」といった意見が寄せられました。


寄せられたご意見やご感想をもとに、さらに沖縄の魅力を生かした食体験の創出を目指していきます。
2日間にわたり、皆様お疲れさまでした。

今回のモニターツアー案内人

●角谷 健/ L’origine 代表
フランスで修行後、全国各地のレストランで料理長を歴任。現在は沖縄を拠点に出張料理、料理・スイーツの商品開発、店舗運営に広く携わり、生産者と店舗、地域を結ぶ活動に取り組んでいる。自店舗開業準備中。「令和5年度多彩な沖縄食体験創出事業」アドバイザー。

http://lorigine.net/