沖縄県産小麦『島麦かなさん』の魅力を学び、県産食材としての価値への理解を深めた後、琉球王朝時代から続く『ぶくぶく茶』の点前を見学。「食の場」における沖縄ならではの空間演出のヒントを得る機会として、ワークショップが開催されました。
■島麦かなさん実食体験【講師】金月そば 代表/沖縄県麦生産組合副会長 金城太生郎 さん戦前沖縄で育てられていた麦栽培の文化を復活させるため、2015年設立された「沖縄県麦生産組合」に2016年から加盟し、飲食業という立場から活動を支えてきた金月そば代表・金城太生郎さん。
県産小麦の魅力を広めるため経営する「金月そば」で県産小麦使用麺を積極的に活用するほか、麺打ち体験などのワークショップを展開するなど意欲的に活動しています。
■ぶくぶく茶点前演出【講師】うちなー茶屋ぶくぶく 代表 島袋弘貴 さん琉球王朝時代、宮廷の賓客をもてなす際に振舞われていた歴史を持つお茶「ぶくぶく茶」のお点前を目の前で披露。今回は壺屋に店を構え、カフェとギャラリーを展開する島袋氏プロデュースのもと、簡易版での体験です。
沖縄らしく気持ち良く晴れた朝、開店前の金月そばgala青い海店へ、参加者の皆様が続々と集合です。
まずは、沖縄県産小麦『島麦かなさん』について金城さんからお話をうかがいます。金城さんは「金月そば」のオーナー。そばと言えば当然ながら、小麦粉を使う。
『他県、例えば北海道や熊本や福岡には地元で生産された地粉(小麦粉)があるのに、地元沖縄には地粉がなかったんです。』
調べてみると、沖縄の小麦栽培は、伊江島(沖縄本島北部の離島)で、戦前に作られていたのですが、、既に沖縄本島での小麦栽培は途絶えていたといいます。
それを現在の沖縄県麦生産組合顧問の仲里正さんが復活させようとしていることを知り、金城さんも生産と普及を高めていく活動に深く関わることになっていったそう。
まずは、生産量を増やすため、小麦づくりをする人を増やしているそうです。また、島麦かなさん普及の取り組みとして麦を利用する買い手である県内の飲食店やパン屋さん、お菓子屋さん、ホテルなどが積極的に麦の「作り手」として参加している点が特徴的です。
自分たちの手で、自らの産業を、より安全で良質なものにしていこうと、熱い想いを持った人たちがどんどん集まり、活動の輪が拡がっています。
無農薬の有機栽培で作ることは鳥害などの影響もあり、並大抵ではなく、100%を収穫することを初めから思わず、自然と共存しながら70%の収穫があればいいという姿勢だそう。
そして、普及させるにはブランド名も必要だと、知恵を出し合い、沖縄の島の地粉ということで「島麦」、「可愛らしい」「愛くるしい」という意味の「かなさん」、合わせて『島麦かなさん』となりました。ロゴの印象から女性のお名前かと思っていたのですが、そうではなかったのですね。
利便性を追求し農薬や化学肥料などを使用する大手の大量生産型の小麦粉に比べて、商品としてはまだまだ比較的高値な県産小麦ですが(大手と異なり作付面積と生産量が少ないことも割高になる理由)、
『地元で採れる安心安全なものだ』『皆で地場産を支えていく事が大切だ』『まさに買い物は投票だ』と参加者の皆さんからも、声があがりました。
沖縄県産小麦『島麦かなさん』の誕生秘話を詳しくうかがったところで、実際に島麦かなさんを使った麺の切り分け体験です。
冷蔵庫がまだ普及していなかった頃からの流れで、沖縄そばは、ゆでた状態に油を混ぜて保存し、食べる時に油を切ってから使うというのが一般的でした。早くて、美味しい。ゆえに沖縄のファーストフードと称する人も。金月そばさんが開店した当初は生麺を扱う店舗は、金月そばさんを含め2社程度だったそうですが、今では、冷蔵庫も普及し、生麺で提供する沖縄そば屋さんも増えてきているとのことでした。
麺の切り分け体験。どのくらいの太さにする?と相談し合あう姿も。
各々好きなサイズに切り分けます。この方は1.5㎝ほど。きしめんのようで楽しいですね。
こちらは、1.5㎝ゆで時間5分
こちらは、8㎜ゆで時間3分
こちらは、3㎜ゆで時間1分半
太さにより、歯応えや味わいがどう違ってくるのか楽しみですね。
自分の麺が茹で上がりました。とてもうれしそうです。
いざ、実食。
うまい!とこの笑顔。戦後の貧しい時代に、安くてお腹いっぱいになる食べ物として、皆を支えてきた沖縄そば。
「豊かになった今、顔の見える食材を使い、きちんとした対価で提供することで、生産者をも支えていきたい。小麦粉を加工してお客様に提供する私たちが、生産者のモチベーションを上げ、消費者にアピールする役割を担っていきます。」という金城さんの思いを受け取りながら、『島麦かなさん』使用の沖縄そばで県産小麦を味わい尽くしました。
続いて、うちなー茶屋ぶくぶく 代表 島袋弘貴さんから、お話をうかがいながら、ぶくぶく茶のお点前です。
琉球王朝時代に飲まれていたという「ぶくぶく茶」。かつて中国から来た冊封使にもお出ししていたおもてなしのお茶でもあり、また福福茶とも呼ばれ、お祝いの席で飲まれていたという沖縄の伝統茶です。お米とお水とさんぴん茶が原料。茶筅(ちゃせん) で丁寧にかき混ぜます。すると、あら不思議、みるみるうちに泡が立ってきました。
これは、お水が硬水でないと泡立たないそうです。沖縄はサンゴの島。沖縄の湧き水は、ミネラル分が多い硬水なので、これでお茶をたてると泡立つのだそうです。
原料もお米とお水ということで泡盛と一緒。泡盛は作る時に泡が立ったことから「泡盛」という説もあるそうで、アルコールの入っていない泡盛茶とも言えるのだとか。
沖縄伝統のやちむんの器(やちむん_沖縄の方言で焼物)に、玄米茶を注ぎ、その上に立てた泡茶を盛っていきます。
まるでソフトクリームのようですね。
お茶うけはこちら、沖縄そばチップスです。
どうやって飲むの?鼻についてしまいそう!思わず笑顔がこぼれます。
鼻についたと思ったら、付いていません!そう、鼻には皮脂があるのでお茶は鼻に付かないそう。
沖縄料理は油を使った料理も多く、ぶくぶく茶で後味をスッキリさせるために飲んでいたとも言われています。かつては、那覇の市場などで「たてやー」と呼ばれる女性が、お茶の道具が入った籠を頭の上に乗せて練り歩いており、「お茶ちょうだい」と呼び止められると、その場でお茶を立ててお出ししていたそう。その情景が目に浮かび、何ともノスタルジック。現在でも、公設市場周辺に「たてやー」がいたら、人気がでそうですね。
放っておけば、なくなってしまうかもしれない伝統文化。ぶくぶく茶もそのひとつ。沖縄の大事な食文化を、今に伝え、受け継いでいくという大切な体験をしました。始まりから、終わりまで、皆さんの『楽しい~』『ためになる~』という言葉があちらこちらから聞こえてきました。皆様、おつかれさまでした。