【見学レポート】日本一の産地を見学 沖縄もずく漁、実は命懸け

2024年4月

沖縄は日本一のもずくの産地として名高く、なんと全国シェアの約9割以上が沖縄県産。そしてここ、うるま市勝連地域は沖縄県内でのもずく生産の約4割の水揚げ量を誇るのだそう。

 

ミネラルや食物繊維が豊富で低カロリー。沖縄では三杯酢につけて食べたり、みそ汁の具材や天ぷらにしたりと、身近な食材として愛されています。

(中でももずくの天ぷらは観光客に大人気。フリッター的な沖縄てんぷら衣にもずくが加わると、フワフワ、しっとりとした食感となり、リピ買いする人続出。)

 

今回、沖縄うるま船団丸さんのご協力のもと、もずく漁を見学させていただきました。

(左端)沖縄うるま船団長 漁師 東卓弥さん

(左から2番目)勝連漁業協同組合 玉城謙榮さん

(右端)SENDANMARU代表 坪内知佳さん

もずくの収穫時期は3月〜6月のみ

もずく栽培は、野菜などと同じように、苗を作ることから始まります。

10月頃に苗を海底で作り始め、種付けし、海を畑に育てていきます。

その育成は自然環境に大きく左右されるため、台風などで大きな被害を受けることもしばしば。

無事、自然の脅威を乗り越え収穫されたもずくは、新芽がでる3月〜4月のこの時期のものが1年で一番おいしく、人気があります。

 

旬を迎えると、地元のスーパーでは、魚と同じようにパック梱包されたもずくに「初物」とシールが貼られ、店頭販売されます。

まさに旬なこの時期に、もずく漁に同行。船に乗り、もずく栽培の漁場まで連れて行ってもらいました。

船で15分ほどで漁場へ到着

ウェットスーツに身を包んだ漁師の東さんは、空気タンクを背負って海へ飛び込むのかと思いきや、船上にあるモーターを回し始めました。

モーターで船上のタンクに空気を送り込み、それをホースでつなぎ、このホースから、潜っている漁師へ酸素を送るのです。

この仕組みを取り入れているのは、空気タンクを背負うと養殖網に引っかかってしまうということもありますが、一番の理由は費用面。1日5〜6時間ほど潜り続ける漁に空気タンクを使うと見合わないコストがかかってしまうのだそう。

 

腰と背中に25キロのおもりを付け、船上からの酸素ホースを股下から腰に巻き、口に装着。水中へと潜っていきます。

とてつもなく長いホースをぶら下げ海中を移動。網に絡まったり、塩で錆びたモーターが焼き付いてしまったら一発、命はありません。高潮やサメの接近リスクも考慮しながら、まさにもずく漁は命懸けです。

しばらくすると東さんが、海底で採ったもずくを網に入れ、上がってきました。その場で試食をさせてくれるようです。

採ったばかりのもずくに、熱いお湯をかけます。するとあら不思議、鮮やかな緑に変化しました。

(フコキサンチンが熱で壊れ、緑色のクロロフィルaが生き続けている新鮮な証拠です。)

沖縄のスーパーに並ぶ「生」と書かれパックされたもずくも美味しいけれど、採れたてをしゃぶしゃぶのようにして食べたこのもずくは、味わったことのないプリプリ感!

これまで食べていたもずくとは全くの別物でした。(船酔いをしていた同行者は、もずくの美味しさに一瞬、船酔いを忘れていたほどです。)

その後、陸へ戻ると、本格的に試食。

塩漬けされていない生のもずくを活かした、勝連漁業協同組合 玉城さんお勧めの食べ方。

生もずくに、そうめん、温泉卵を加え、ネギと海苔、めんつゆをかける。

2種類の麵をすする感覚で、そうめんとプリプリとしたモズクが絡み合う食感は、全国民に食べてもらいたい美味しさ。暑い季節にぴったりです。

良質なもずくを、もっと全国へ。

漁獲量が減るなど様々な理由で、今、各地の漁師たちの生活は厳しい状況にあり、東さん自身も例外ではありませんでした。

そんな折、東さんは2022年放送のドラマ「ファーストペンギン」を観て、このドラマのモデルとなった女性が実在している事を知ります。

 

その女性こそ、漁業の6次産業化を漁師たちと共に構築している『SENDANMARU』代表の坪内知佳さんでした。漁獲した魚は坪内さんと漁師自身が船の上で血抜きし、陸に上がってすぐに見栄えよく箱詰めを行い、自分たちで値付けを行っています。

鮮度を保った上質の魚を顧客へ出荷することで、付加価値を高めているその取り組みを知り、東さんは坪内さんの門戸をしつこいくらいに叩いたそう。

 

そして2024年2月、東さんは漁師仲間とともに坪内さんと『沖縄うるま船団丸』という水産会社を立ち上げ、3月〜4月の新芽で一番おいしい時期の「生」もずくに徹底的にこだわった商品「生粋海蘊(なまいきもずく)」の販売をスタート。

名前のいわれは「生意気な漁師たち」の「生もずく」だからとのこと。船団丸さんらしい商品名です。

漁師たちは漁に出ると、海水に付けた状態でもずくを陸に運び、そのままパック梱包する仕事へ。

採って終わりではなく、消費者が箱を開ける瞬間を想像しながら、その日のうちに丁寧に自らパッキングしていきます。これも船団丸さんのこだわりのひとつです。

 

同じ頃に、沖縄うるま船団丸の漁場である勝連漁業共同組合のモズク加工処理施設がリニューアル。

これまで一般的だった塩漬けもずくではなく、採れたてを空気に触れさせず生のまま冷凍する『無塩蔵活もずく』が量産できるようになり、解凍すれば採れたての鮮度で、あの緑色の生もずくが味わえるようになりました。

豊かな自然に育まれた勝連産もずくの美味しさを、もっとたくさんの人に味わって欲しい。良質なもずくを全国に届けられるよう、沖縄うるま船団丸の奮闘は続いていきます。