【開催レポート】島の自然や伝統文化を生かした、食体験価値の創出 薬草ツアーとポーポーづくりと島野菜を使用した琉球料理

2024年2月8日

地元に住み慣れて普段は見過ごされがちですが、独自の自然や伝統文化、地域ならではの歴史や物語など、沖縄には他にはない魅力がたくさんあります。足元を見つめなおし、今一度その価値に触れることで、沖縄ならではの食体験創出へのヒントを得る機会として開催されました。

 

■薬草のスペシャリストと行く薬草探求ツアー
【講師】ミナト食堂オーナー 上地みゆき氏
かつて、沖縄は島中が薬草の宝庫でした。しかし急激な発展と共に在来種の植物たちへの価値が見失われつつあります。本ツアーでは宮古島で日々植物をパトロールし、採取した薬草の調理法などを島人や観光客などに伝授している薬草のスペシャリスト・上地氏を講師としてお招きし、すぐそばにある野草や薬草について学びながら浜比嘉島を散策。その魅力を再発見しました。

 

■平安座サングァチポーポー体験
【講師】ポーポー屋ターミー 田村明美氏
旧暦3月3〜5日、仏壇へ供える平安座島の「サングァチポーポー」は親族が集まる時の定番菓子。表面につぶつぶと丸い穴が開いているのが特徴です。島一番のポーポーづくりのレジェンド・田村氏にポーポーづくりの秘伝を教わりつつ、島のお話と共に焼きたてポーポーの美味しさを味わいました。

 

■島野菜を使用した琉球料理
【講師】ロリジン 角谷健氏
本事業アドバイザーである角谷氏が、参加者と共に採取した薬草や島野菜を使った簡単な料理を上記ポーポーと一緒に味わいながら、沖縄の伝統料理や文化についてみんなでユンタクし、ワークショップを振り返りました。

まずは島に自生している、薬草、毒草の散策から

食に関わる事業や観光関連事業に従事する方たちが集合。
まずは本事業アドバイザーである角谷さんから薬草ツアーの講師・上地さんを紹介いただき、島に自生している、薬草、毒草の散策スタートです。

上地さんから、資料と薬草保管用のお手製バックが配られます。

上地さんの普段の活動拠点である宮古島の新聞でつくった薬草入れ。温もりを感じます。
資料は薬草の写真付きで、効能、食べ方が記され、また毒草の紹介も。

「それでは、さっそく参りましょう」のかけ声から数秒後、すぐに上地さんが座り込みました。

「これはイヌホオズキ。毒です!」いきなりの毒草登場に一同、驚きました。

続いて、イヌホオズキのすぐ隣に自生してた、青い可愛らしい花を指さし、「ルリハコベという、これも毒草です。」と上地さん。
沖縄では道端でよく見かける花。
「可愛らしいので、一輪挿しにして食卓に飾ってました!」
「毒草はこんな身近に生えているものなのですね。」と話される参加者さんも。


「花を触った後に、目や粘膜のある場所を触ったりしなければ大丈夫ですが、お子さんがいる場合はやはり気を付けたほうがいい。このように道端に生えているような、よく見かける植物の中に毒草があり、重症の場合、意識不明や死亡に至る物などがあります。

肝心なのはむやみに触ったり、口に含んだりしないことです。」と上地さんからアドバイス。

こちらはアメリカフウロという薬草。アメリカインディアンが薬としても使用していたという記録も。
胃腸薬としての作用もあるとされ、全草、根も食べられるそう。

車を駐車しているこのような場所でも、上地さんと少し歩くだけで、古くから民間で止血に使われてきたチドメグサや、アーユルヴェーダで利用されるゴツコラなど、次々に薬草や毒草が見つかりました。

続いて海岸に移動。

海岸に自生しているハマウド。風邪、腰痛、頭痛、歯痛、痛風、慢性気管支炎、リューマチス、マラリアに効果があると伝えられているそう。若葉を和え物や天ぷらにして食べるそうです。

浜辺にもたくさんの薬草があり、熱心に学ぶ参加者さんたち。楽しそうです。

上地さんより「昨日、那覇の県庁のそばを歩いただけでもたくさんの薬草がありました。一方で、日々、島の自然は変化しており、豊富にあったはずの薬草たちがある日、忽然となくなります。そのスピードが近年加速していると感じています。自生する薬草を採取するだけでなく減少しつつある島の在来植物を増やしたり、少しづつ移植して絶滅をさせない活動として薬草ツアーを行っていますので、ツアー参加後はお持ち帰りいただいて、薬草をお庭や畑、プランターなどで増やしてお楽しみください。自生している植物たちを乱獲しないことが大事です。」

最後に、各自、抗菌作用のある葉を探し、1枚採って、次のツアー場所へ移動します。この葉はオオバコ。

彼女は月桃の葉を選んだようです。

お次は、サングァチポーポー体験へ

続いて平安座公民館へ移動し、平安座サングァチポーポーづくりのレジェンド・田村明美さんにポーポーのお話を伺います。

サングヮチポーポーとは、旧暦3月3日から5日の三日間に平安座島で行われる島最大の行事『サングヮチャー』の際、仏壇に供えられる伝統お菓子のこと。

この期間は毎日お仏壇に供え、お客さまにもお出しするのだそうです。
見た目は一般的な「ポーポー」や「ちんびん」に似ていますが、全粒粉と麦粉を使い、水を十分に吸わせるため、一晩寝かせるのがポイント。給水時間で仕上がりのもっちり感が断然違ってくると教えて下さいました。

アドバイザーの角谷さんが用意してくださっていた色鮮やかな混ぜご飯をそれぞれがおにぎりにして、沖縄らしくユンタクの準備です。

色とりどりでとってもきれいです!

自身で摘んだ抗菌作用のある葉の上に、自身で握ったおにぎりを乗せます。
参加者さんが握っている間に、上地さんが公民館を出て行かれました。すぐに戻って来られたのですが、なんと公民館周辺を見渡し、「琉球山椒の葉」と「リュウキュウコスミレ」をサッと採ってきてくださったのです。(上記おにぎりの上に彩りとして乗せています)カッコいいですね!


食べられるのか?毒なのか?身近に自生している植物に興味があり、幼い頃から皆に教えているうちに、そのままお仕事になっていったという上地さん。上地さんの眼になって近所を歩いてみたら、いったいどんな世界なのだろう?きっと宝物だらけに違いないですね。


ロリジン角谷さん作
*おにぎり(青)バタフライピーとイーチョーバー(ウイキョウ)の混ぜご飯
*おにぎり(黄)黄金芋とタンカンの皮とジュースの混ぜご飯
*はし休め(右)島人参とニガナとセロリ(シークヮーサーとタンカンのジュース和え)
*はし休め(左)ウイキョウのカブとウイキョウの葉(新玉ねぎと生姜とニンニク炒め)
○味付け 浜比嘉塩
○お皿の葉っぱ オオバギ
○お皿の上飾り モクビャッコウ
見たこともない美しい色のおにぎりに、皆、興味津々です。

サングヮチポーポーとおにぎりに舌鼓を打ち、ツアーを振り返りながら楽しいユンタクを楽しみました。
最後にお世話になったお二人からご挨拶をいただき、ツアー終了です。
皆様、お疲れさまでした!