【開催レポート】世界に認められた〝紅茶の産地〟 沖縄のテロワールが生み出す紅茶で新たな食体験の創出へ

開催日:2024年10月10日 

「まだまだ売上を上げられる領域が、こんな身近にあったのか…」

 

参加したオーナーシェフからのひと言が印象的だった、今回の視察交流・ワークショップのテーマは「紅茶」です。

日本人の約40%がお酒に弱い体質と言われており、最近では「あえてお酒は飲まない」という層も、若い世代を中心に増えつつあります。
また、車社会である沖縄の飲食店にとってもノンアルコールの市場は見逃せません。

 

ノンアルコールのニーズが高まる中、今 注目を集めているのが、沖縄のミネラル豊富な赤土で栽培され、世界的な賞を受賞した沖縄ティーファクトリーの『琉球紅茶』です。
世界三大紅茶産地に続く第四の産地として注目を集める紅茶の魅力とは。


本ワークショップでは、沖縄県産紅茶という新しい価値を通し、新たな食体験創出のヒントを得る機会となるよう、沖縄ティーファクトリー代表の内田智子さんを講師に迎え、その魅力を学ぶとともに、琉球紅茶とホテルのお料理とのペアリング体験も行いました。

講師:内田 智子氏(株式会社沖縄ティーファクトリー 代表取締役)
紅茶バイヤー・ブレンダー。紅茶流通に長くかかわり、その中で得た知見から沖縄が紅茶原料栽培に適することに気づき、沖縄に国産紅茶品種を無農薬で定植。その茶畑で作られた紅茶が国際味覚審査機構で二つ星を受賞しています。

講師サポート:山田 悟史氏(株式会社沖縄ティーファクトリー エグゼクティブマネージャー)
トップセールスマンであった外資系医療メーカーから、紅茶に惚れ込みこの世界へ。
優雅にサポートして下さいました。

ペアリング料理担当:山中 貞之氏(ASBO STAY HOTEL内レストラン『Alo Edesse』 料理長)
フランスの星付きレストランで修業後、同じくフランスで『restaurant sandikala』の立ち上げに関わり、chef に就任。一年後にはミシュランフランス版2021にてグリーンスターを獲得。
13年のフランス生活を終えて帰国し、現在『Alo edesse』にて勤務。これまでの経験や料理哲学などを沖縄にて表現しながら、ここでしか食べられない新しい形の琉球フレンチを追求されています。

沖縄は日本唯一の産地として「紅茶100年史」に記されている

紅茶の三大産地といえば、
・ダージリン(インド)
・キームン(中国)
・ウヴァ(スリランカ)

 

これらの地に次ぐ新しい第四の産地として、沖縄が注目されるようになりました。

 

沖縄は原種のアッサム種(「茶農林1号ベニホマレ」など)の日本唯一の産地として、戦前から残る『紅茶百年史(日本茶業史資料集成 〈第19冊〉)』にも記されているのです。

 

その価値に気が付いた紅茶バイヤーの内田さんは、苗から育て茶畑を造成。
その品質を世界に証明するために無農薬・有機栽培で沖縄独自のテロワールの形成を心掛け育んでいます。その結果、内田さんの作るその紅茶は、国際味覚審査機構の優秀味覚賞で二つ星を3年連続受賞しています。

二つ星を3年連続受賞している沖縄県産紅茶「月夜のかほり」

紅茶の品質の見分け方を学ぶ

早速、紅茶の品質の見分け方を学ぶため、山田さんから参加者の手のひらへ茶葉が配られました。

茶葉を手のひらに丸めて取り、指で軽く押してみます。

 

パキパキとそうめんが折れるような軽い音がしたら、その紅茶は良い旅をしてきた紅茶である証。もしザクッと低い音がしたら水分が抜けすぎています。良い品質のお茶は水分量5%以下です。

次にそのまま指を下にスライドしてみます。良い品質の紅茶はこの時点であまり割れません。炭素化してしまった紅茶は割れてしまいます。

 

緑茶、紅茶、ウーロン茶の違いについても教えていただきました。
・緑茶は茶摘みしてすぐに加熱し、発酵をさせないもの
・紅茶は完全発酵させるもの


完全発酵を少しでもかけると、それはすべてウーロン茶となります。

完全発酵したものは、紅茶ポリフェノールが形成されるため、油脂と糖質を加えることでさらに味わいが良くなります。

紅茶の品質を調べるには、まず、上記のようなフィンガーテストで湿度をチェックし、色味を見て、ミルクと紅茶を加えることで味わい深くなるかを見極めます。

美味しい紅茶の入れ方とテイスティング

品質の見分け方が分かったところで、次は正しい紅茶の入れ方を学びながら、実際にテイスティングをして味わいを確かめていきました。

数種類の紅茶を無糖の状態→砂糖(糖質)を入れた状態→ミルク(油脂)を入れた状態でそれぞれ飲み比べ、茶葉による味の変化を確かめながらテイスティング。

紅茶を入れた後の茶葉を触るとフワフワとしていました。これも良い旅をしてきた紅茶であることの証拠だそう。

 

口の中に含んだ瞬間の口内での感じ方で、自分の嗜好が分かり、好みの紅茶と、その産地や標高が分かるようになるテイスティング。
例えば、酢の物が好きな方は、口の奥を使って口内調味をする傾向があり、ダージリンを好みやすい。ネギやミョウガが好きな方は、上アゴを使って口内調味をする傾向があり、標高1200m以上の場所で栽培された紅茶をお好みになる、という具合に、みなさんそれぞれ自分の好みを新しい驚きとともに発見。

 

舌の通り道、口の使い方により変化するお茶の好みや、お砂糖を入れた時ミルクを入れた時とで変化する、それぞれの味わいを体感しながら学びました。

ワークショップ中、内田さんから次々と興味深いお話が飛び出します。

・イタリアンは比較的、口の前の方を使う料理なのでそれに合った紅茶がおすすめ。


・あんぱんが自慢のお店が出すお茶は、パンが美味しいと感じる紅茶にするか、あんこが美味しいと感じる紅茶にするか?それによっても茶葉や、ブレンドの比率が変わってくる。お料理にワインを合わせるように、紅茶においてもマリアージュ次第で味わい方が変わる。


・ティーパーティーで最初に出すお茶は、好みが分かれやすいダージリンではなく、比較的多くの人のストライクゾーンに入る、ミディアムグロウンのセイロンティーからスタートとするとよい。


等々、今日からでも実践したい具体的なアドバイスに、みなさん耳を傾けていました。

飲食の売上を左右する紅茶の力

もし劣化した紅茶を飲んで、小麦粉を使った料理を食した場合、極端においしくなくなるというから驚きです。

 

パンケーキやパスタなど、折角美味しいものを提供していたとしても、口内調味の瞬間に料理自体の印象が悪くなってしまうのはとても残念なこと。
しかし一方で、良質の茶葉を使い、料理と相性の良い紅茶を合わせることで「より美味しい」と感じさせることができるのです。

 

『紅茶は食べ物を売るトリガーである』
『ノンアルの中で、安価でワインに代わる飲料は他にない』

 

紅茶が美味しければ、料理をいっそう美味しいと感じさせることができ、評判を高めることにつながる。料理に合わせて数種類の紅茶の提案をすることで、ノンアルターゲットの売上を上げることが可能になるというわけです。

 

では、なぜ紅茶がワインと同じように料理とのマリアージュに向いているのでしょうか?

 

ワインは味を表現するのに、タンニンという言葉をよく使います。
タンニンはポリフェノールの一種で、苦味や渋みのもとになっており、赤ワインに含まれることで知られています。

そのタンニンが茶葉にも含まれており、お料理と組み合わせることでさまざまな効果を生み出し、より料理の味を引き立てるのです。
ワインと同様、料理に合わせてさまざまな茶葉を組み合わせ、奥深いマリアージュを楽しむことができることから、紅茶もペアリングに適しているといえるのです。

いよいよペアリング!売上アップの秘密を体験します

参加者の前に、本日のお料理のメニューと常温の紅茶が置かれています。

 

今回は、山中シェフの料理に合わせて、ダージリン、オールドアッサム、アンバー、サンセットの4種類の紅茶を用意。

 

ワイングラスに入れ、常温で提供します。
紅茶は温度によっても味が左右されるため、料理に合わせるには常温がベストな状態。「ワインには氷を入れないですよね」と内田さん。納得のひと言。

 

実は内田さん、全くお酒が飲めないのだそう。
「飲めない人だってマリアージュを楽しみたい。ワイングラスだって使いたいんです。ワイングラスで提供することで、お客様の気分も上がり、提供価値も上がります。」

いよいよ4種類の紅茶と、山中シェフとのペアリングが始まりました。

 

料理に合わせてどの紅茶が合うか、食事をしながらディーペアリングを確認していきます。
「ダージリンは美味しいけれど、料理と合わせるには強すぎるかも」など参加者からの感想がでます。

アペリティフ

パスカード_フランス修業時代の師匠のスペシャリテであるクレープスフレ

スープ_ゴーヤーと島バナナのスープ、海ぶどう、シークヮーサー砂糖ヨーグルト、スペアミント、しそ

季節の野菜_二十四節気

海の幸_シチューマチ、濃厚なエビのソース、パプリカ風味の揚げパン、黄金芋のペースト、小松菜、ハナニラ、県産レモン、レモンマリーゴールド

金アグー_ロース肉、バルサミコソース、焼き茄子のペースト、キヌアカラシナ、シシトウ、ピパーズ、タイバジル、ペパーミント

自家製アイス、ちんすこう、ミニタルト、フィナンシェケーキ、チーズケート、季節のチョコレート

参加者の中にも普段お酒を飲めない方がいらっしゃいました。
「食事と一緒に水や緑茶が出てくるとそのたびに口の中がリセットされ、料理に合わないと普段から感じていました。こんな風に紅茶でペアリングすると、料理と合うことが分かりますし、とっても嬉しいですね。」
「今日のペアリングでお客様への新しい提案の仕方を学びました。早速、自分のホテルでも紅茶とのペアリング商品を提供してみたいです。」

茶畑を見学

戦前から残る『紅茶百年史』には、沖縄がアッサム種(「茶農林1号ベニホマレ」など)の日本唯一の産地と記されています。紅茶に適した土地、沖縄で無農薬・有機栽培で育てている沖縄ティーファクトリーの茶畑へ向かいます。

紅茶の花も良い香り

木の太さは手首ほど

場所に合わせて木の高さを変えるなど、数年かけて、育て方の研究もされています。

贅沢に降り注ぐ日差しは紅茶に不可欠なタンニンを作り出し、ミネラルたっぷりの土がタンニンを豊富に含む茶葉を育てます。この茶畑は太平洋側から潮風が吹き込む場所にあり、その風がメリハリある沖縄特有の味わいを作り出しています。

ワークショップを終えて参加者さんの感想

「紅茶はデザートのお供の役割、と思い込んでいましたが、ワインのように料理とペアリングをすることで、ノンアルコール飲料を好まれるお客様へご提案できるという発見がありました。売上も上がりますね!」

「沖縄は日本で随一の紅茶に適した土地であり、沖縄県産の紅茶栽培をしていることを初めて知りました。お土産にもいいですね。」

みなさん新しい知識を得て、すがすがしい気持ちでワークショップが終了しました。お疲れさまでした。

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