【開催レポート】生産現場ツアー てるてるファーム 農園見学

2024年2月1日

有機JAS認定(無農薬栽培)で付加価値の高い南国フルーツの生産に取り組む照屋和江さんの農園を訪れ、栽培についての工夫などのお話しをうかがい、良質で人気を集める農産物の育成および提供のヒントを得る機会としてワークショップを開催しました。

毎年、沖縄の数々の品評会で連続受賞をしているフルーツ生産界のスター・照屋さんのお話をうかがいたいと、農業従事者、飲食店オーナーのみなさんが集合です。

【講師】沖縄県女性農業士 果樹栽培家 てるてるファーム 照屋和江氏

果実に悪さをする「害虫」を捕食する「益虫」をハウスに入れ、農薬ではなく昆虫の力を借りて害虫を減らす『天敵農法』を実践し、有機JAS認定を取得。安心で地球にも体にも優しい南国フルーツは県外からの注文も多く、人気を呼んでいます。

それでは農園見学スタート!

農園の中を案内いただきながら、照屋さんのお話をうかがいます。

入った瞬間、照屋さんの育てているパッションフルーツの大きさ、ぎっしり実のつまった重量感と美しさに驚きました。どの実も大ぶりで、艶があり宝石のよう。こんなに美しいパッションフルーツを見たことがありません。

こちらは照屋さんが実験で育てている品種。照屋さんはとにかく実験が大好き。実験からの考察を通して、「美しく」「美味しく」「安全」なフルーツを自信をもって生産しています。
この品種は紫よりも、さらに実が大きく、スマートフォンと同じサイズでした。

パッションフルーツとアテモヤを育てる女性農業士の照屋さん。照屋さんは農薬や化学肥料なしの有機JAS規格を取得。
太陽熱を使った遮熱処理、納豆菌、酵母菌、また、天敵を活用するなどの農法で生産しています。具体的にはどのようにされているのでしょうか。

地球にも体にも優しい南国フルーツ、その具体的な農法とは

パッションフルーツの樹々たちの傍らに、なにやら違う種類の樹が植わっています。

パッションフルーツに悪さをする虫は、アザミウマ類、ダニ類、カイガラムシ、ケムシ類。
これらの天敵である虫をそばに置き、その虫に天敵を食べてもらうというのが、天敵を活用した『天敵農法』です。この樹はアザミウマの天敵であるタバコカスミカメという虫が大好きな樹。

天敵が好む樹を植え、害虫をやっつけてもらう。タバコカスミカメが全てをやっつけてくれるわけではないですが、そのような環境を作ることによって寄せ付けにくくします。
また受粉後は、アザミウマが花ガラの中に生息する習性を利用して、朝、農園に来たら、まず花ガラを取る作業をし、そのまま袋に入れて、2,3日蒸し殺してから、土に捨てるなどの工夫もしています。

以前は花ガラを取ったらそのまま外に出していたそうですが、そのまま外に出すと、卵がかえってまた翌年虫になって入って来ることから、やり方を変えたのだとか。

他にもハウスの番人としてカエル、クモ、ヤモリを積極的にハウスの中にいれ、彼らに食べてもらうことで害虫を駆除します。
ケムシ類は虫パトロールをして自らの手で取ったり、殺菌効果がある事で有名な酢を噴霧しながら歩いているそう。こうやって、薬を撒かずに日々観察と考察を繰り返しながら、改善を加えている照屋さんの姿勢が今日を作っているのだと感じます。

一見、パッションフルーツとは関係がないと思われますが、害虫の天敵がやってくる大切な樹です。
この樹に生息する虫(パッションフルーツの害虫を食べてくれる虫)を顕微鏡でみる参加者さん。顕微鏡でもなかなか発見できないくらい小さい。この小さい虫たちを意識し、観察しながら照屋さんは果実をていねいに育てています。

収穫後、1日置いて病気や虫が出ないか様子を見てからの出荷準備。

少し置くことでこんなにきれいに色づきます。本当に美しいですね!有機栽培=大変な苦労というイメージです。しかし、照屋さんからは「大変だ」オーラが全く出ていない。むしろ楽しんでいるご様子です。

困りごとや失敗、疑問が起きた時の照屋さんの動きはまずどうしてこうなったのかを考え予測→予測の上で実験→結果を見て考察する→やっぱりそうだったか!


この一連の動きを楽しんでいらっしゃり、また生産に関わってからの18年分の気温、花の数、「どうしようかな?」が起きた時のデータを綿密に蓄積されているとか。すごい!

今回は、女性で農業をされている参加者さんも多数。熱心に質問をしています。

森のアイスクリームアテモヤを試食!

照屋さんの栽培されているもう一つのフルーツ「アテモヤ」。
アフリカンプライムとジェフナー種の2種類を育てています。まだまだ知られていないフルーツですが、甘みも食感も、森のアイスクリームと言われる事に納得。

一方で、知られていないフルーツだからこそ、特徴や食べごろを伝える難しさもあるのだそう。桃やバナナと同じように、触れると触れたところが黒くなるという梱包の難しさも。
食べごろを迎えたアテモヤはクリーミーでアイスクリームのようでした。

アテモヤにミルクを加えたもの。砂糖類は一切加えていないのにまるでシェイクのよう。

そこにさらにパッションフルーツを乗せる。美味しいこと間違いなし。

フルーツの気持ちになって考えた結果が今の形に

照屋さんは、かつて美容師だったそう。
その後、ふたりの男の子の母親となり、ご両親の持つ畑の再興のため、農業の世界に入られました。今年で丸18年だそうです。
農業をやると決めた頃、「女性にできるわけがない」という声も多く、一方で「あなたならできる!頑張って」と応援してくださる方もいた。
出来るわけがないという声は、反対に「なんとしてでもやってやる!」と照屋さんのパワーの源にもなったそう。

 

「手で行う受粉、面倒でしょ?蜂でやったら?」という声にも決して面倒とは思わない、むしろ好きな作業だと喜んで取り組む。
そう、生き生きと考察しながら、照屋さんは楽しんで大好きな農業をされている。

 

照屋さんに今回、お話をうかがいましたが、お話をうかがったとて、果たして同じことができるかどうか?心から農業が好きかどうか、育てているものをどれだけ可愛いと思えるかにかかっているように思えました。

 

例えば、どうしたら一番いい状態でこの子たちに実を着けさせてあげられるか、剪定(せんてい)ひとつとっても、じっくり考えながら作業をされる。
薬を使って、ある種「強制的に」育てるのではなく、その子が一番好きな環境とは?のびのびと彼らが育つ環境は一体どういう状態なのか、フルーツの気持ちになって考え、まるで子育てをしているかのようでした。
だから照屋さんの果実はのびのびと大きく、生き生き育っているんだ、と納得した今回のワークショップでした。

 

最後に、農業に、家事に、子育てという目まぐるしい日々のはずですが、『仕事は追われるのではなく、追いかけろ』と仰った言葉がとても印象的でした。